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題未定:短編小説【4】|みんなのブログ
題未定:短編小説【4】
13/06/07 00:16
この輝きを、永遠にとどめたい。
くすりゆびの先をコップの中に浸して、そっとくちびるに乗せてみた。夏の新色のリップグロスみたいに。くちびる全体を、なぞって彩る。
貴方の匂いと味わいが拡がる。あたしの瞳もアソコも、みるみる溢れてしまう。このまま逝かされてしまいそうだった。
崩れ落ちそうなあたしの身体を、慌てて貴方が抱きとめる。
そのあたたかい腕の中で、あたしは、そのまま絶頂を迎えていた。
「ごめんなさい////逝かされちゃったみたい////」
貴方に抱きしめられたまま、あたしは、コップの中の残りを呑み干す。
「キラキラなジュース、ぜんぶ飲んじゃった。なくなっちゃったけど…後でまた、くれる?」
小声で訊いたあたしに、貴方は、コクコクと何回も頷いた。
「さあ…それでは…身体をほぐさなくっちゃ」
あたしはゆっくりと立ち上がり、貴方に向きなおる。
人に押される車椅子は、一見、楽そうだが。実際には、見かけより、数倍疲れる乗り物だ。
クッション効果が少ない車輪だから、路面の粗さがそのままひびくし、座った姿勢が何十分か続くと、血が滞って、足腰が怠くなる。
「まずは、背伸びから始めましょ」
あたしが、背伸びの手本を示す。はにかみながら、貴方も、大きく伸びをする。
腰を回し、膝の屈伸をして、アキレス腱を伸ばし…こわばっていた身体を、少しずつ元に戻していく。
「さっきは必死で気付かなかったけど、身体中がギシギシ軋んでるよ」
「健康な人だから、それで済んでるんですよ。本当に車椅子が必要な人は、自力だけでは自由に動けないことが多くて。こまめに姿勢を変えて、マッサージもするんですけど…それが足りないと、みるみる腱や筋肉が萎縮して、全く動けなくなる事もあるんです」
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