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おわかれ|みんなのブログ
おわかれ
13/08/24 21:11
あたしの親戚の一人に、軍医として従軍した人がいたんです。
身分の高い兵にも末端の兵にも、同じ待遇で治療したり。本当は規約違反なのに、非戦闘時には、中国人さんの病状をみかねて、こっそり治療してあげたり。
それで、将校さんから、
「身分の低い者をつけ上がらせるのは、けしからん!」
と、苦言を呈されたらしいのですが。
「俺は、患者を苦しみから救う為に医者になったのだから、相手が誰であれ、困ってる者は治療するまでだ」
と、反論。
あの時代の軍隊で、そんな発言をしてただで済むわけが無く、一触即発です。
そこに、幸か不幸か、日本が敗れたという知らせが届き。
彼のいた部隊も、散り散りに敗走したのだそうです。
おそらく足手纏いだったろうに、二等兵さん達が、命懸けで一緒に連れて行ってくれて。
しかし、途中で、殺気だった中国人の一団に囲まれてしまいました。
(俺もとうとう此処で終わりだな)
と、覚悟した時、中のひとりが彼の治療を憶えていて『良い日本人』として仲間にとりなし、そこからは、一行を、日本に戻る船まで送ってくれたんだそうです。
おかげで彼は、生きて、また日本の土を踏むことができましたが。
沢山の人達が、帰れぬまま中国で果てるしか無かったのです。
彼は、自分と一緒に逃げてくれた兵隊さん達を一生の友として、中国との国交が回復してからは度々、彼の地に渡り、助けてくれた中国人さんや、帰れなかった人達の墓を訪ねていました。
『医者の価値は診る相手で決まるのだから、患者を選べ』
という忠告には、やっぱり耳を貸さず。心身に障害を持ってる人達の学校の校医も、自ら望んで務めていました。
優しかったけれど、そういうところは、いつも一徹な人でした。
そんな彼が、永眠。
彼の事だから、あの世でも、閻魔大王さまだろうが亡者だろうが、区別することなく並ばせて、治療するつもりでいるのでしょう。
愛用していた白衣に包まれて棺に眠る彼に、あたしもお別れを告げてきました。
彼もまた、従軍者という闇を内包しながら、その後の人生を生きた一人だったはずです。
時代の波に揉まれながら精一杯行きた彼に、真の安らぎが訪れる事を、祈ります。
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