昨日の裏道のもうちょい先には、揚げ物屋さんがあるって知りまして。今日は、わざわざ行ってみました。

なるほど、昨日通った場所からほんの何ｍか入った所に、ぱらぱらと人が吸い寄せられて行きます。
買い物籠を下げたおばちゃんも、仲良く手をつないだカップルさんも、どうやらそのお店がお目当てなもよう。

店先のベンチでくつろぐ白いアゴ髭が山羊サンみたいなおじいちゃまは、御近所に住んでる常連サンさんで。地元の名物おじいちゃまでした。
ここで買った揚げ物をつまんでビールをグビグビしながらのお喋りが、何にも勝る楽しみなんだそう。
なんと、その為に、わざわざ、木のベンチと屑籠を作って設置なさったというほどのツワモノぶりで。
あたしも早速捕まって、いろいろ教えてもらいました。

昔々、偉い人がお通りになって、皆で旗を振ってお迎えした事や、災害で大変な思いをした事や…まるで、いましがた起きたかというように、次から次に、昔語りが溢れ出してきます。

この道の栄枯盛衰は、そのまま、おじいちゃま自身の歴史だったのかもしれません。

ひとしきりお喋りを愉しみ、かたい握手を交わして、さらに何度もハグして貰ったあと、やっと、お目当ての揚げ物を買い込み。
もいちどベンチに座り込んで、ガブリとかじりつきました。

「ほれ、そこにキンキンのビールがあったら、他には何も要らないって思ったろ？」

と、悪戯っ子みたいな目で笑うおじいちゃまを包んで、うららかな風が、吹き抜けてゆきます。

あぁ！
日本はなんて平和で佳い国なんでしょう。

最近は、調子の良い日しか外に出なくなったという、おじいちゃま。いっぱいお話を聴かせて貰えた今日のあたしは、運が良かったんですね。
これからも地元の名物おじいちゃまとして、いつまでも元気でいらしていただきたいものです。